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私は35年前、この緑坂で生まれ育ちました。当時のこの町は、夕方になれば豆腐屋のラッパの音が響き、路地裏では子どもたちが暗くなるまでボールを追いかけ、隣近所がおかずを分け合うような、良くも悪くも「おせっかい」が当たり前の風景がありました。 大学進学を機に上京し、東京のIT企業で15年ほど働きましたが、3年前に父の介護のためにこの町へ戻ってきました(いわゆるUターンです)。
戻ってきて最初に感じたのは、圧倒的な「静けさ」でした。 綺麗に整備された道路、新しいマンション。町は便利になっていましたが、道ですれ違っても挨拶を交わす人は少なく、私が遊んだ公園には「ボール遊び禁止」の看板が寂しく立っていました。 ある日、父の散歩に付き添っていると、昔なじみのタバコ屋のお婆ちゃんが「最近は誰とも話さない日があるのよ」と寂しそうに笑ったのです。その言葉が、私の胸に深く突き刺さりました。
「かつての活気をそのまま取り戻したい」と言うつもりはありません。時代は変わり、ライフスタイルも多様化しました。昔のような濃密すぎる近所付き合いは、忙しい現代人にとっては時に負担になることも理解しています。 しかし、「困ったときに顔が浮かぶ誰か」が近所に一人もいない状況は、あまりにも心細いのではないでしょうか。
そこで私が提案したいのが、「ひだまりテラス」という場です。 これは、堅苦しい自治会組織や、義務感で参加する会合ではありません。コンセプトは**「まちのみんなの、セカンド・リビング(第二の居間)」**です。
私たちが目指す活動は、大きく分けて3つあります。
一つ目は、**「得意の交換(スキル・シェア)」**です。 例えば、定年退職されたシニアの方が、DIYや園芸の知恵を若い世代に教える。逆に、学生や現役世代が、スマホの操作やSNSの使い方をシニアに教える。「教えてあげる」のではなく「教え合う」ことで、世代を超えた対等な尊敬が生まれる場所を作ります。
二つ目は、**「食卓の共有」**です。 月に一度、公民館のキッチンを借りて「ひだまり食堂」を開きます。一人暮らしの高齢者も、共働きで忙しい子育て世帯も、みんなで同じ釜の飯を食べる。ただ一緒にカレーを食べるだけで、不思議と会話が弾み、そこから「来週、子どものお迎え、代わりに行こうか?」といった自然な助け合いが生まれることを期待しています。
三つ目は、**「ゆるやかな防災」**です。 いざという大災害の時、行政の支援が届くまでの時間を支えるのは、間違いなく「近所の底力」です。しかし、顔も知らない人を助けるのは難しいものです。普段から「あそこの家には足の悪いおじいちゃんがいる」「あそこは赤ちゃんが生まれたばかりだ」という情報を、プライバシーに配慮しつつ、顔の見える関係の中で共有しておくこと。これが最強の防災対策だと私は信じています。
「ひだまりテラス」には、入会金も面倒な役員決めもありません。「天気がいいから散歩がてら寄ってみた」「家で一人でご飯を食べるのが寂しいから来た」「ちょっと時間が空いたから」そんな理由でふらっと立ち寄れる場所でありたいのです。
もちろん、私一人でできることは限られています。現在、私の想いに賛同してくれた30代の主婦の方、70代の元大工さん、そして地元の大学生が運営メンバーとして加わってくれていますが、まだまだ仲間が足りません。
何か特別な特技は必要ありません。「誰かの話し相手にならなれるよ」「重い荷物くらいなら運べるよ」「ただ、賑やかな場所が好き」そんな動機で十分です。 むしろ、地域活動にこれまで全く関心がなかった方、引っ越してきたばかりで知り合いがいない方にこそ、ぜひ参加していただきたいのです。
この文章を読んでくださっているあなたと、緑坂の未来について、コーヒーでも飲みながら語り合える日を楽しみにしています。 一人ひとりの「小さな灯り」が集まって、この町全体を照らす大きな「ひだまり」になるように。 まずは第一歩、私たちと一緒に踏み出してみませんか?
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